Archive for November 2013

01 November

<Natalis Newsより> 大学入試改革への提言提出〜家庭で考えるべきことは?

 報道の通り、政府の教育再生実行会議が先月末、大学入試改革の提言をまとめ首相に提出しました。内容は、2種類の「達成度テスト」を創設することを中心に、6・3・3制の見直しにまで踏み込もうとするものです。
 達成度テストは、ともに希望制で複数回受験が可能。そのうち「基礎レベル」は高校在学中に受けるもので推薦やAO入試の基礎学力の確認用。現在のセンター試験に替わる「発展レベル」は、大学教育を受ける学力の保証との位置付けで、結果は1点きざみの点数ではなくレベル別で表示し、外国語や各種検定(以前挙っていたTOEFL、英検や簿記検定など)の活用も認めるとしています。また、2次試験に相当する各大学独自の試験では、面接・論文や、部活・ボランティア・海外留学等の活動実績などを評価し「多様な方法」による選抜を増やすことを求めています。
 今後は、中央教育審議会で検討し、早ければ5年後(現中2生から)にも実施とされています。しかし、これだけの大改革ですからさらに議論を積み上げることは必要で、まずすんなり最短で実施となることはないでしょうが、いずれにせよ、来春予定の中教審の答申が注目されます。
 ここから今、家庭では何を考えておかなければならないかを考えてみたいと思います。現在小学生以下のお子様でしたら、新制度で大学を受験することになる可能性が十分にありそうです。それは、親も教師も予備校も、誰もまったく経験したことのないものになります!そして、テストの点数一発勝負という現状からいかに離れるかを狙ったものになるわけですから、身につけるべき能力の内容とその表現の仕方が問題になるので、高校2、3年時の勉強だけでは不充分となりそうです。さらに、これから様々な議論がなされて実現までには紆余曲折が予想されます。それどころか、実施後に修正という名の変更の可能性もあるでしょう。今後の議論の行方を注意しながら見守らなければなりませんが、決まってから対策をたてるのでは遅すぎるということも考えられますし、常に制度や学校に振り回されない“自己防衛の教育”をこそ考えておくべきです。
 では、何ができるのか。いつもお伝えしていますように、家庭教育は、(1)我が子に合わせることと、(2)まずは重要な能力の土台部分を大きく広くすることをめざし、(3)的を絞って力を集中して行うこと、という方針を堅持すべきです。そのためには、今回の制度改革の背景、すなわち現状の問題点を見極めておくことでしょう。それは、大別して次の2点になります:大学生/卒業生の学力の低下への危機感(すでに希望すれば全員入学できる「全入」時代になっている上、推薦やAO入学者が4割を占め学力が充分でない入学者が増えている、入学後も成績評価が曖昧で楽に卒業できる、等々)と、グローバル化への対応(英語や表現力など世界を相手にしたコミュニケーション力や、テストだけでは測れない幅広い活動経験などの行動力や人間力の必要性)。要するに産業界からは世界で戦える人材が待ったなしで求められているわけですから、私立の一貫校に早くから入って大学入試を忌避すれば安心、とはならないわけです。どの大学に入り、何を学び、どんな仕事をめざしても、国内だけでなく世界中の人々と関わりを取り結びながら創造的に活動していける人づくりを国を挙げて実現しようとしているのですから。そこを意識して的を絞るとすれば、英語によるコミュニケーション力を高めることも必須ですが、「話の内容」こそがより重要になり、広い知識を駆使して自分なりの考えを説得力を持って表現できるだけの思考力=国語力を高める以外にありません。これまでと何も変わっていない?その通りです!大事な根本がそう簡単にブレてはいけません。ただ、もっと高い達成と達成時の学力の形を変えていくことが求められていることだけは確かなのです。

23:54:00 | natalis | |