Archive for August 2015

01 August

<Natalis News>より  もっと話せるように!!

 先月は、大学入試改革の方向性と当方の考え方を概略だけお伝えしましたが、当学院もこれから順次変革に着手していく予定です。今回は、新たな方針の一つとして「話せる力」の強化についてお知らせします。
 さて、今でこそ「英対話」などといった言葉で、従来の英会話にかわる対話ができる力の養成を謳う文句に出会うことが多くなりましたが、例えば、劇作家/演出家で屈指の理論家である平田オリザ氏の読者の間では15年以上も前から、いわゆる「会話」と「対話」を区別した上で、世界標準である西欧的な「説明し合う文化」に応じた「対話力」を高めることが、日本人のコミュニケーション力向上をめざす上で不可欠であるという了解があり、大いに影響を受けてきたものです。
 「会話」がわかり合った者同士の連絡のようなものだとすれば、「対話」は外部の他者との意図と情報の交換と交渉で、結果として双方が新しい段階に達することを目的とする行為です。歴史的・文化的に私たち日本人が苦手とするこの「対話」を、今やグローバリズムの圧力の中、英語という標準語とともにもっと高いレベルで獲得しなければならないというのが現在の状況でしょう。
 そこで百家争鳴ということになっている訳ですが、私たちの問題は、はじめて英語を習う幼児や小学生から初級/中級段階にある中学生位までの生徒にいかに対話力につながる要素を持たせていくのか、という点にあります。そもそも日本語での対話どころか会話すら十分にできない段階から、どう学ばせられるのか、どうすればその先で違いが出てくるのかを試行錯誤するなかで、まず「相手の意図を汲み取る」力を養成することを一つの柱としてきました。ひとり一人との意味のある密度の濃い「やり取り」を段階的に(0歳から小学生まで、発達に応じて)積み重ねるメソッドで、かなりの成果を発揮していることは、例えばほとんどの生徒が英検のリスニング部門がどの級を受けた場合でも満点に近い点数を取り続けられる、といった豊富な事例に見られます。
 次の段階としては、当然、発話力をさらに強化するということになります。方法としては、まずは発達に寄り添った働きかけということですが、これは以前から強調してきました通り、どんな赤ちゃんも養育者の声かけに意図を持って反応するように、人間は周囲とのコミュニケーションによって成長するべくプログラムされて生まれてきているのですから、発達心理学的な知見を最大限につかって、自ら「環境に働きかけ」たり「他者を発見」して社会性を開き伸ばすためのアクティヴィティを今以上に系統的に導入することになります。これは、幼児クラスのゲームやロールプレイから着手します。
 また、小学生以上になれば、演劇的な要素を少しずつ加えていくことになります。子どもたちは、本来演じることが大好きです。これまでも音読の重視から中学段階でオーラル・インタープリテーションの入り口程度までは行ってきましたが、ここでは、ちょうど上述の平田オリザ氏らの演劇ワークショップ等も参考になるでしょう。あくまで教室内の授業の一部として演劇的な要素も活用していくということで、劇の発表会をするわけではありません。毎週のレッスンが、情報を出し合いお互いの意図を摺り合わせて何らかの目標に到達するために英語を使う実際的な訓練になることをめざします。
 読む・書く・聞く・話すの4領域に分解した英語力ではなく、相手との関係のなかで、それを進展させるために必要に応じて使いこなせる総合力を、週1回の通学と最小限の宿題という極小の労力で身につけることに、一緒にチャレンジしていきましょう。

00:51:33 | natalis | |