Archive for 01 March 2018

01 March

<Natalis News>より 「備え」のThe Way of Life

 ようやく厳しい寒さも一段落し、これまでにないインフルエンザの流行も収束が見え始め、日差しに春の暖かさを感じる瞬間も増えてきました。また、冬季オリンピックも過去最高の成績で終わこともあってか、はたまた景気も悪くはないということなのか、世間では“なんとなく”明るいムードが漂っているようにさえ感じられます。それは決して悪いことでもなく、水をさすつもりは毛頭ありませんが、また日が伸びて力強く花開く春を迎え、時の巡りを感じる時だからこそ、心新たに確認しておかなければならないこともあると思います。
 あれはリーマンショックから2年が過ぎてようやく待ち望んだ季節の訪れが少しずつ感じられる、そんな気分が広がりはじめてきた頃でした。その日、東京は暖かくのどかな青空に光があふれていたのをよく覚えています。そして、一瞬で舞台が暗転するように、大きな揺れの後で、私たちはあの惨禍を共有することになりました・・・。
 毎年この時期になるとあの時のことを思い出し現状を確認するために様々な記事を探したり、当時の自分の記録としてこの"NEWS"なども読み返すことにしています。直前の3月1日に書いた3月号では、親として我が子に厳しく接する覚悟の大切さを、進級進学の時期だからこそとの想いで書き付けていました。震災と原発事故の先行きも学院の存続さえ見えない3月31日に書いた4月号では、大戦の焦土から復興を成し遂げた先の世代の方々の努力の歴史を想起しながら、バトンは今我々の手の中にあると記しました。
 様々なことが起こり生活も社会も少しずつ変化していくなかで、変わらないのは生きていくことのたいへんさーーー未来を正確に知ることができないという限界から来る、潜在的な脆弱性でしょう。天変地異は別にしたとしても、私たちは急速に進展していく社会の大きなうねりをどう乗り越えていくのか、という緊張と不安に常にさらされています。楽観的にやり過ごすことも一つの選択ではありますが、「備え」こそがたいせつであることを忘れてはならないと思うのです。そして、最も大きな備えが教育であるということも。目の前の我が子に、愛情をもった厳しさで「備え」を授けていく、その営みは、バトンを握ってしっかり頑張りながらも、それを渡す相手を育てていくことに他なりません。
 武士道の話でよく言われる、いざという時のために物への執着を断ち、いつでも出立できるように暮らしたという武士の理想とした生き方が教えてくれるのは、物に頼るのではなく、厳しく己を律する「心構え」を鍛える修養の姿勢です。これこそ、私たちがこの国で、災害や苦難を乗り越えて生きながら磨き上げてきた、誇るべき「心の備え」の "Way of Life" です。生徒たちには、それを携えて世界へとはばたき、伝え広めてほしいと希望しています。

17:15:13 | natalis | |