Archive for 01 March 2012

01 March

<Natalis News>より  言い訳をしない、真剣勝負の日々を

 あれから1年が過ぎ、寒い冬を越えてそれでも木々は芽吹き再生の春を迎えようとしています。
 思い返してみれば、夏までは日々未曾有の経験を受けとめるのに必死の緊急事態が続き、その後は、慣れによる感覚マヒと落ち着きとを伴いながら、少しずつ日常性を取り戻してきたような気がします。このような事態にあって、改めて日本の社会と政治の『中心』(あるいは「リーダーシップ」)の不在のマイナスを痛感し、または逆に、だからこそ国民一人ひとりの粘り強い底力を再確認した、と遠目からの物言いも出来るかもしれません。
 しかし、冷静に我が身と子どもたちが置かれた現実に目をやると、従来からの課題に震災というあまりに大きな一撃が加わり、もはや待ったなしの厳しいところまで追いつめられていると認識せざるを得ません。復興やエネルギー政策と年金や健康保険といった内政、消費税増と経済の再建の道筋と産業の空洞化対策等の経済面、普天間基地やTPPその他の外交関連といずれも少しでもかじ取りを誤ればこの国の近い将来が危うくなるほどの難問に対してもはや猶予はありません。震災の緊急避難で許される時間が終わってしまえば、これらの問題は国際的な評価に晒され、当然この国の債務の評価へと焦点化されていくことになります。焦って軽挙妄動に走る必要はありませんが我が子にバトンを渡すその日のことを考える視点からは、もはやすべてに対して真剣に、まさに一太刀で決めるほどの集中をもってあたらなければならない時を迎えていると言えるでしょう。
 昨年の3月号の当欄では、「覚悟」について書きました。それはわずか11日後に現実からも最も厳しい形で要求されることになりましたが . . . 。一部を再掲しますと、

 ・・・挑戦や出発、あるいは船出といった言葉がふさわしいこの季節にこそお伝えしたいのは、「覚悟」の二文字です。・・・・私たちは確かにこの言葉にある種の美意識をこめて使ってきました。危機に陥ったときに「覚悟を決める」という使い方ではなく、何かをはじめようとするその時に、強い決意を持ちある種の絶対に譲れないものを意識し悟った凛とした心の状態として。子育ての、子どもとのつきあいの長い道のりにおいてもこの境地に達することが必要な時があると思います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    親の「覚悟」には、それを厳しく実践しようとすればするほど子どもにはわかってもらえないという苦しさも伴います。それでも、社会に対する使命感と、これまで生きてきた自分自身の生き様をのすべてをこめるからこそ、この覚悟は厳しく徹底されるほど美しいのです。この時期、子どもがまた一段と広い世界に踏み出そうとする時にこそ、私たち親もまた背筋を伸ばして、「覚悟」を新たにすべきではないでしょうか。

 わずか1年後の今は、「危機に陥ったときの覚悟」も決めて、あらゆることに臨まなければならなくなっているといえるかもしれません。それは、言い訳をして猶予を求めない,、真剣勝負の日々の始まりです。親の覚悟の深さや真剣さは必ず子どもに伝わります。どんな世の中でも生きていける人間の“芯”を鍛えるために、この時代をともに確かに歩んで行きたいと思います。

22:06:46 | natalis | |