Archive for July 2013

01 July

<Natalis Newsより> 働きかけの考え方 〜理論編〜

 家庭でどんな働きかけをするのが効果的なのか、という質問は幼児から小学高学年まで多くの保護者の方々からいただく質問です。どうやれば我が子の力をうまく伸ばしてやれるのかということは、英語以外でも、特に中学受験をお考えのご家庭などでは大きな課題でしょう。もちろん、年齢や内容、現状や目標等によってかわってきますので、具体的な話は個別のご相談に譲るとして、ここでは基本的な考え方を紹介しておきたいと思います。
 まずは考え方の土台となる理論編。赤ちゃんから大人と同じような自我も備えた思春期の年齢まで、人間は驚異的なスピードで成長していきます。その成長の様態を様々な角度から研究するのが発達心理学で、最近はそこに脳科学の知見が取り込まれることも多くなってきました。もう少し学習ということに焦点を当てると、当然、教育学が中心となりますが、従来はどちらかというと教える側からの視点に立っていて、教え方や教材、環境から制度にまで広がり細分化されています。学ぶ側の頭の中を問題にして、理解や記憶などのメカニズムを探るのは認知心理学の持ち場ですが、ここにも脳科学をはじめコンピュ−タや人工知能などの理論も重要な関連を持ちはじめています。さらに、学ぶべき内容の方からも、例えば、言語学であれば応用言語学と呼ばれる領域には、言語の特性に即した学習や教授法の研究もあります。
 さてそれで、広大な学問領域で膨大な研究が進められている中で、実際何を頼りにどんな考えで日々の我が子への接し方を決めていけばよいのかということです。そのためには、さらにおおもとの考え方となる哲学・思想の潮流も、人間観や教育観といった見方への影響という点から重要になってきます。(記号論や現象学、構造主義〜ポスト構造主義といった言葉にもときどき出会ったことがありますね。)また、「最新」というラベルに飛びつくのも危険で、やはり、臨床的・実践的な経験からの判断も加える必要があります。その上で、いきなり結論のかわりにキーワードを挙げるとすれば、「相互作用」「対話」「社会的状況」「協同」等々となりましょうか。わかりやすく翻訳してつなげると、教えられる側(子ども)と教える側(教師や親)と切り離して別々に考えるのではなく、両者とさらに教材や周囲の環境まで「その場にいてつながり合っている関係と捉えてお互いにやり取りをする」なかで学びが行われるのだ考えようということです。
 ここから具体的な方法のヒントも見えてきます。例えば、脳の機能向上が見られたといわれるものがあったとして、それをドリルのように毎日機械的に繰り返してやらせるとか、昔からあるフラッシュカ−ドのような刷り込み学習によってある知識を覚えさせようという方法とは対極にある考え方でしょう。低学年から多人数の塾で一歩的な授業を受けさせて、家ではひたすら一つひとつの解き方までを暗記させるとか、様々な教材を揃えて「自分で解いてこそ力がつく」と突き放す、といった方法も同様です。
 どんな言葉も対話の中ではじめて意味を持つ、言い換えれば、相手に向けられた言葉が次々に交わされるなかで、意味が現れ理解という事件が起き、さらにどんどんその内容が書き換えられていくと考えましょう。あることばが対話でのやりとりを通じて習得される、ということは、相手の意図やその時の周囲の状況とあわせて受け取られ、辞書的な意味にはるかに多くの生きた情報を加えて取り込まれるということになります。こう考えれば、対話のやりとりがうまく成立する架け橋となるような「場」をつくること、つまり、おもちゃで一緒に遊びながらする会話や読み聞かせをしながらときどき脱線することの意義も見えてきますし、一人ひとりをよくわかってくれている講師と数人の仲間がいる楽しい空間で学ぶことの重要性もご理解いただけるかと思います。
03:23:40 | natalis | |