Archive for September 2015

01 September

<Natalis News>より  霧の向こう側へ

 天候も、景気や内外の政治動向もはっきりしないまま九月を迎えました。先行きの不透明さという停滞感のためにかえって、すべてが流れ、移り行くという真実の実相ばかりが強く意識されるものだと思ってみたりもします。
 さて、新学期。子どもたちは決して止まることなく、どんどん新しい季節へと踏み出し進んで行きます。成長とは、他のあらゆるものの移ろいよりも格段に速く、増大・高度化・複雑化といったプラスの方向に変化する、奇跡のような時期のことだと言い直すこともできます。それは内発的なものなので、私たちが外側からできることは「伸ばす」ことではなく、自ら伸びるのを手伝い促進する役に限られます。けれど、それをどうすればよいかが常に難しい問題ですね。
 話は逸れますが、最近また0〜1歳児クラスのご入会やお問い合わせが増えてきました。少子化の傾向は変わらないなかで、ありがたいことに荻窪校には午後の新クラスも開講しました。巷では、いろいろな意味で2020年の東京オリンピックが当面の目標のように語られることが多いようですが、今の幼児さんたちが社会に出るのは2030年代になるのです。あの9.11の衝撃からイラク戦争へと突き進んだ今世紀初頭から今日までの出来事と揺れ動きながらも世界が進んできた道筋を考えると、これからの15年でどんなことが起きるかはまったく予測不可能だということと、それでも何か誰にも止められない大きな流れのあることは感じられます。その中心にグローバル化という大きな潮流があり、様々なレベルでのdomain(ドメイン=地域や域圏)とより広い地域や全体とのせめぎ合いが続くなかで、ますます質の高いコミュニケーションの重要性が増すことだけは確かでしょう。「21世紀の中葉を生き抜く我が子」という歴史的な目で見た表現をしてみると、若い保護者の方々も意識的か否かにかかわらず不透明な霧の底を流れる確かなものを感じ取られて行動されているのかと思います。
 2004年に入会してくれたA君は、途中、中学入試等でブランクがありましたが、数年で復会して高3のこの夏も休まず通ってくれていて、今は毎回東大の過去問を楽々と解いていきます。文三の志望を文一にしようかと迷っていて、どの道に進めば世界の中で何が果たせるのかと自分の資質との折り合いをいろいろと検討しています。2003年入会のB君とも同様に10年以上の付き合いとなりましたが、今年有名大学に入学した彼は、ネイティヴ講師との会話練習とTOEICの学習をしてきていよいよ本格的な留学について具体的な検討を始めました。中学受験の追い込みで睡眠時間がだんだん削られていくときにも、将来はきっと留学するんだからと国語と英語の両方を頑張った日々が思い出されます。彼らは、もう少し身近な切実な現実として自分の将来像と世界とを感じ始めているようです。
 はっきり見通すことが不可能な未来へ、それでも日々ぐんぐんと成長を続ける我が子。0歳から自立が完成する18歳頃までの間、どのような考え方でどのように「伸びる」手伝いをしてやるべきなのか、発達段階と個々の環境、そして本人やご家族の思いや目標を考慮しながら、ご一緒に考えさせていただければと思っています。多くの方との出会いのおかげで、その場だけの無責任な情報や宣伝に惑わされることなく少し先ともう少し先に何が待ち構えているのかをお伝えできる強みがあると自負しています。まずは、改めて年齢別の働きかけや家庭学習のポイント等を順次まとめていければと思います。世の中がどんなに揺れ動こうとも、ブレることなく「誕生から自立までの成長に寄り添うことのできる場」をめざして参ります。

00:01:00 | natalis | |