Archive for August 2007

01 August

『学問のすゝめ』のススメ

 参院選も大方の予想を超える結果となり、国政についての議論がますます熱を帯びています。当面の政局だけでなく、年金問題や教育改革から憲法まで、この国をどうしていくのかを待ったなしで真剣に考えるべき時が来ているようです。
 いつも「自己防衛としての家庭教育」ということをお伝えしていますが、長期的かつ包括的な国づくりにおいても、教育が大きな基であることは言を待たないでしょう。そして、人づくりこそ国づくりと考える時、ぜひ皆様にお勧めしたいのが、福澤諭吉の『学問のすゝめ』です。
 あの有名な「天は人の上に…」で始まる古い書物が何故今さら.....と思われるかもしれませんが、再読してみますと、現代の日本と日本人の状況が明治の初めと比較して実は情けないほど進歩していないことに気付かされます。そして、何が必要なのかも。確かに、技術や文明は発達し、悲惨な経験も経て社会や人権などに対する思想も深められ浸透してきてはいますが、全てを相対化してみると、この社会の中でのわたしたちの在り様は、福澤が言葉を尽くして覚醒と改革を訴えたその時代を大きく踏み出してはいないことがわかります。だからこそ、智(知性)を磨き高めることの必要性や、国家や情勢に対して自らをどう対峙させるのかという姿勢の保ち方をはじめとして、わたしたちが我が子を育てるという一大事業を最善をめざして実践しようという時に、今でも切実に受け止めるべき示唆に富んだ提言が読み取れるのです。
 この時期に福澤を再びひも解いたのは、幕末から始まった外国の文化の爆発的な吸収作業、特に、未知の文物や概念を英語や欧州各語から日本語へ移入する過程で、どのように困難を認識しそれを超えていったのか、その結果、現代の日本語とそれで示し得る概念にどのような遺産をもたらしたのかを検証したいという関心からでした。実は、彼ら先達が苦労の末に創り出したその道のりは、今英語を学んでいる生徒達も、眼前の英文を読み取る、いわば言語という異文化そのものとの格闘の中で、一度はぶつかり乗り越えなければならない道程でもあるのです。福澤自身は、その作業を通じて、『学問のすゝめ』にも見られる彼の思想を深め鍛えていったのです。生徒全員にそのレベルまでの英語体験をさせたいと思う所以です。

00:01:00 | natalis | |