Archive for September 2012

01 September

<Natalis Newsより> 抽象的思考力が決め手!伸ばすためのポイントは?

  人の話や読んだことをその場で正しく理解し、吸収できる子どもがいます。新しいことを教えると、すぐに既存の知識の体系の中に正確に位置付けていることがわるような洞察や
質問を返してくれます。そんないわゆる“頭のよさ”の決め手になっているのが、高い言語能力に裏打ちされた抽象思考の能力です。折に触れてお伝えしているこの能力には、大きく伸びていく時期があります。(発達の時期には、非常に大きな個人差があり、常々我が子の成長曲線を知ることの大切さを訴えてますが、今回は、わかりやすさを優先して以下ではあえて一般化して示します。)
 最初の大きな山場は、小学2年から4年生頃にかけて、学校の授業でどんどん新しい知識やそれを扱うための(日常生活レベルを超えた)語彙を体系的にたくさん学ぶようになってそのような思考パターンが出来始める段階です。多数の言葉とともに抽象的な概念を操作する術を身につけると、学力を飛躍的に高めていきます。一方で、なかなか抽象的な世界へ踏み出せない生徒も多く、新しく学習する一つひとつのことを理解するのに苦労し、いつも応用問題が苦手です。ここで大事なことは、この差の理由の大部分は、幸運や遺伝子の問題ではなく、それまでの蓄積の差であるということです。
 0歳からどんな言葉を与えられてきたのか、語りかけや読み聞かせの総量や質の違い、さらにはある年齢以降にどんな体系的な学習をしてきたのか、ということだけでなく、それらがどれだけ本人のその時々の状態やレベルに「合って」いたのか、また、積極的に受けとめようとする気持ちがどれだけ育てられていたのか、といったことのすべてが要因となっているのです。語りかけや学習の中身も当然重要です。無理なツメコミなら害にしかならないことは言うまでもないでしょう。

 ☆乳児期のポイント・・・・できるかぎり多くの語りかけを本人の注目していることに関して行う。膨大な量の読み聞かせ、歌や英語など働きかけに多様性をもたせる、一方的にせず、常にやり取りのなかで働きかける...等々。 
 ☆幼児期・・・・図形や位置関係の原型がもてるような、あるいは見立て遊びができるようなシンプルな玩具、習い事など継続的な学びの習慣づくりと言葉や数など目的を持った働きかけの導入、等々。 
 ☆就園〜小1・・・・集中力や持続力を養うドリル的なトレーニングの開始、文字の目標化、日本語・数・英語の内容への概念化の導入(覚えた物の名前を分類する「仲間集め」や初歩の計算操作、等)。一人読み読書への移行〜完全音読へ.....他。

 しかし、不幸にしてそんなにうまく抽象の世界に離陸できていなかったとしても、悲観する必要はありません。次の飛躍の時期がすぐにやってくるからです。こちらの方が個人差が大きく、中学受験をするしないといった環境の差も大きいため、わかりにくのですが、5、6年生から中学生の時期に(大人に近いかたちでと言う意味で)本格的に概念の複雑な操作ができるようになります。ここでぐんぐん進めるかどうかも、もちろんそれまでの蓄積と準備段階がポイントです。

 ☆小学1年生から・・・・漢字と熟語、新しい言葉を確実に覚えていく。教科書などの書写。一字も間違えない完全音読の習慣化。算数の応用問題の活用(言葉⇄図⇄式)。辞書引き。日記等の作文.....。
 ☆中学年から・・・・熟語の自在な使用、要約訓練、自主的な調べ学習とまとめ、概念操作自体の学習 (例えば、接続関係の理解と接続詞の使い方、差異の発見とその記述、因果関係、時間空間上の比較、英語での部分作文、等々。)

 実際に何をどのように進めていくのかは、ここでは書き切れませんが、二つの大きな階段に向けて目的を明確に絞り込んだ働きかけや学習サポートを心掛けていただきたいのです。
 具体的なご相談もお待ちしています。

15:17:10 | natalis | |