Complete text -- "英会話4つの“?” <3>「会話力」と学力」って別ものなの?"

19 May

英会話4つの“?” <3>「会話力」と学力」って別ものなの?

 世間に流布している英会話についての“?”な事柄について、私たちの考え方をお伝えするシリーズです。

 → 小学高学年や中学生の会話です。「あなたずっと英語習ってたんでしょう?」「うん、でもあれは英会話だったから。」これだけでだいたいどんな状況でどんな意味で交わさせている会話か、多くの方が想像できるのではないでしょうか。
 マスコミや公官庁の統計資料等の多くにおいても、英会話はスイミングや音楽と同様の「習い事」という範疇に収められ、塾や予備校などとは区別されることが多いようです。その意味をつきつめれば、入試や学校の成績といった実際的で明確な結果が求められるものと、経験や技能を高め素養となるものを長い時間をかけて身につけるもの=目先の目標達成などで判断されず習うこと自体に価値があると考えられているもの、といった違いがあるようです。
 さて、冒頭の会話は、何年も習ってきた子がテストの点が悪かったとか、問題に答えられなかったといった場面で、あれは「タダノ習い事ダッタカラ」とあきらめまじりに弁解しているところ、というよくある場面です。しかし、もしこれが我が子のセリフだったとしたら、どうでしょう。あるいは、将来こんなことを言う可能性があるとしたら。毎週々々の時間と労力と経費をかける気がするでしょうか。
 「いや、少なくとも英語好きになったのだから」、とか
 「発音は悪くないし、耳もきっと・・・」と満足できるでしょうか。

 当然の話ですが、将来(この場合は中学以降で)役に立たないものなら意味がありません。また、そもそも英語力は一つであって会話力と学力が別物として扱われること自体おかしなことです。実社会で必要とされるレベルが最終目標ならば(それにも様々な段階があるでしょうが、一般的な仕事や活動、生活や交流の最低限のレベルと想定したとしても)、中学高校程度の学力(語彙、文法、読解力、作文力等々)がなければ、会話そのものも到底内容のある十分実用に耐えるものにはならないでしょう。
 問題は、これまで会話力と学力を同時につける方法がなかったことによるのです。そして、英会話は特殊技能であり、ネイティヴまたはそれに準ずる講師とたくさん話す練習をするしかないと思い込まされ、「英会話」という特殊な「習い事」がなんとなく成立していたことによるのです。(方法的には、第二言語の習得の方略を手っ取り早くまた営業的理由から採用してきたことによる、ということは『4つの“?”<1>幼児英会話は「触れる」だけでいいの?』で述べた通りです。)結局、極言すれば、こういった「英会話」か、中学校の先取り学習としての旧態依然とした文法中心の学習法しかなかったことがこの国の子ども英語教育の不幸と言えるでしょう。
 
 私たちの方法については他でも詳しく触れていますのでここではあまり繰り返さないようにしますが、ポイントだけまとめると以下のようになります。

・これまでの英語教育に絶対的に足りなかったのはコミュニケーションの部分であり、小学生以上ならそれをただ触れるだけの経験で止めずに、コミュニケーションの能力と姿勢とを養成する方法をとること。その中心は初級段階では「相手の意図を汲み取る」力をつけることに集中すべきで、そのためにネイティヴ講師との対話学習を確保し、楽しみながらも何が飛び出すかわからない真剣勝負の場面に参加させること。

・小学低学年であっても、十分に英語に触れる経験を持ち、わかりやすく焦点をあてられた英語を系統的に与えられた後でなら、文構造や文法的な事項も無理なく理解できるようになる方法がある。そして、その子の認知面の発達に寄り添い、理解し納得することを重視して日本語も使って教えること。

・全体としては、子どもたちにとって意味のある内容で(教授法的には、コンテンツ・ベースで)、その中でも重要な言語要素には注意を向けながら(Focus on Form)、繰り返し練習も入れ(スパイラルな回帰構造をもったシラバスで)、常に現在の力のその次の段階(最近接領域)が身につくように配慮しながら、学びの全体を構成していく、等々。

 最後は専門的に書いてみましたが、実際には週1回50分の楽しいレッスンを続け、宿題は単語を見写しで書くような簡単なプリントを2〜3枚程度で、2、3年続けていただければ英検5級(中1終了相当)に合格するレベルの力は十分身につきますし、その先も4級、3級(中3終了相当)と小学生のうちに進むことは十分に可能です。そして、毎回お伝えしていますが、英検3級まで進んだ生徒でも、半分を占めるリスニングについては全く教える必要がありません。知らない単語もいくつかは使われているわけですが、なんとかして聞き取るというより「わかってしまう」と彼らは説明してくれます。「相手の意図を汲み取る」能力が育っているのです。そして、基本的な英文は作れるようになっていますから、本当に自分が言いたいことを言えるようにするための発話やライティングのトレーニングは、この段階から本格化させていくのが効率的なのです。



23:23:00 | natalis | |
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