Complete text -- "<NATALIS Newsから>世界に貢献する人に〜 その「志」と能力と"

01 November

<NATALIS Newsから>世界に貢献する人に〜 その「志」と能力と

 当学院には、中高生担当の学生講師が数名だけ在籍していますが、全員いわゆる帰国者で完全なバイリンガルであると同時に、難関大学の入試も突破して「受験英語」(!)にも精通している人たちです。
 その一人で、もう在籍1年半以上になる現役東大生のYuki先生がしばらくお休みすることになりました。理由はボランティアとしてアフリカに行くためです。比較的安全と言われる国ではあっても首都のスラム街で貧しい人々の援助を行う活動に参加するとのこと、危険度は日本と比べようもありません。そのまさに隣国では、9月に国際医療支援団体に所属する日本人医師の赤羽桂子さんが誘拐されたまま現在も解放されていないことはニュースで報じられている通りで、難民も多数流入しているようです。また、8月にはアフガニスタンで長く現地の人々とともに活動してきた『ペシャワール会』の伊藤和也さんが拉致され殺害されたことも記憶に新しいところです。
 それでもなぜYuki先生は行くのか、尋ねてみました。
 彼女には、国際行政の仕事に就きたいという思いがあったのです。国際行政というとまず国連が思い浮かびますが、他にも様々な組織があります。どんな分野であれ、それは自分の国や民族の枠を超えて世界、人類という視野でこの星の上で起こっていることを見、考えていく必要がある仕事です。そのためには、世界の厳しい現状を実際に体験として知っておくことが重要だと考えたのです。ごく自然に、人間のために働くことを考えたらそうなったとでも言わんばかりの素軽い口調に頼もしささえ覚えました。
 世界に開かれた目を持った若い人たちに大いに期待したいと思います。では、そうなるために必要な要件とはどんなことでしょうか。ここでまた英語やコミュニケーション能力の話をするつもりはありません。それは当然のことですから。それよりも一人の親として一緒に考えたいのは「志」という最近聞かれなくなった言葉です。この国で普通に生活しながら、世界の動きを知り何が必要か自分に何ができるかを考えることは、知性を鍛えることでできるはずです。親の側からすれば、普段の話題や時にはしっかりした議論を積み重ねるといった“家庭内文化”から芽を育てることもできるでしょう。それでも最後に残るのは「志」です。昔、衣食足らずとも礼節をわきまえ大局に立って判断し行動したひとを“士(さむらい)”と言い、その心=強い思いを「志」と呼んだのでしょう。今、この国の家庭と社会がもう一度蔵か押入れの長持の中から探し出してこなければならない宝物です。そして私たち自身が忘れていては次代に託すこともできないことも確かです。
 話は変わりますが、この夏カナダの大学で実施された夏期セミナーに参加した中2のMさんは、帰国後学校の英語スピーチコンテストで発表することになり、その原稿で、言葉が伝わらない不安な毎日を越えて最後には国籍や民族を超えた"friendship"の大切さを強く感じたと書いてくれました。その文からはおとなしい女の子という印象だった彼女が確実に一歩も二歩も強く大きな人間へと成長したことが伝わってきます。こんなところにも「志」へのヒントがあるのかもしれません。

 アフリカに行くには、今でも黄熱病を始め多数の仰々しい名前の病気の予防注射を何本も打たなくてはなりません。今日も体がだるいと言いながら夜遅くまで指導にあたってくれたYuki先生の無事な活躍とともに、赤羽医師と同僚の方の一日も早い元気な帰還をお祈りしています。

00:01:00 | natalis | |
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