Archive for November 2011

01 November

<Natalis News>より  失敗に学び、『自ら伸びようとする姿勢』を育てるほめ方とは?

 「どんなことでもやればできる;努力を続ければ必ず前進でき能力を伸ばすことができる」と信じ、それを生き方の姿勢として身につけている人は、何であれ成功することができる人でしょう。我が子にはそんなまっすぐに伸びようとする人になってもらいたいものです。今回は、そんな前向きな志向をもった人は、やはりというべきか、間違いから学ぶ能力が高いことが証明されたという話をご紹介しましょう。
 The Association for Psychological Scienceの研究誌に掲載の、ミシガン州立大学 Jason ・ Moser教授の研究がそれです。研究は、最近の例に漏れず脳の電位測定等で客観的なデータとして示されたものですが、複雑になるのでまとめてみますと、「自分の知能レベルはこんなものだ」と固定的に捉えている人よりも、「がんばって努力を続ければたいていのことに関する能力は伸ばせる」と成長志向に考える人の方が間違いから学ぶ能力が高いことがわかったというものです。間違いの直後(4分の1秒後)に現れる認識反応とやや遅れて出てくる意識的な(注意して内容を検討するような)反応の値が両者ではっきりと違い、成長志向の人の方が間違いをおかしたあとで正答率が急上昇したということです。つまり、自分はもっと伸びると考えている人は、間違いに気づく力が高く、そこから学んでどんどん修正していく能力も高いということになります。それは、とりもなおさず学び方が上手く効率もよいことになり、長期的には両者の間に差が広がっていくことになるでしょう。学校時代の勉強も高度な研究もさらには人としての人生の歩み方すらも、極言すれば失敗の連続で、そこからどう学ぶかが大きく結果に影響するわけですからこれは大きなことです。
 さて、この研究を紹介していた'WIRED'日本語版のように、Moser教授の研究の土台となった考え方として、キャロル・ドゥエックのマインド・セットの概念にも触れておくべきでしょう。これば3,4年前に『「やればできる!」の研究』(草思社)という翻訳も出版されて話題になったので読まれた方もあるかもしれません。マインド・セットとは上記のような能力に関する姿勢のことで自分の能力に限界を設けないこと、結果より学ぶ課程を楽しむ姿勢が成功につながるといったことが主張されています。なかでも参考になるのは、ほめ方の違いが伸びに大きな違いをもたらすという研究です。「頭がいいね」と能力の高さをほめられるよりも「一生懸命がんばったね」と努力をほめられた生徒の方が、難しいことに挑戦するようになり、間違いから学んでより良い結果に到達することができるようになった ー より能力を伸ばした、というのです。
 Moser教授の研究がこの説を補強していることになりますが、日々生徒に向かい合っている私たちもこのことは強く認識しています。同じクラスで同じところを学習していても、一人ひとりが異なる環境をもっており、それぞれ違うことを課題としながら進んでいるので、間違いの原因に気づかせることと、「ここをこれだけがんばったから、これができるようになった」という自分の努力の道筋を一緒に確認し認めることを最も重視しているのです。失敗を繰り返しながらもがんばって何かを達成した経験をした子どもの目は輝いていて、次の挑戦を求めています。ちょうど今、英検の結果が出始めたところですが、ギリギリまで「このままでは危ない」と言われてがんばった子ほど大きな自信を手に入れているようです。それは自分の努力の大きさを自分が一番よく知っているからでしょう。ご家庭でもどうぞ努力していることを認め、何回でもしっかり口に出してほめてあげてください。そして、今日の宿題でも、長い受験勉強の戦いでも、あるいは、習い事を始める/やめるといったことでも、すべてに「努力すれば必ずできるようになる」という人生に対する姿勢を養うという目的があることを常に親子で確認していたいものです。

21:58:26 | natalis | |