Archive for 01 July 2008
01 July
<NATALIS Newsから> めざすところは
K君も中3の6月には英検2級(高校終了相当)合格まで進んでいた生徒ですが、その後もかなり力を伸ばし高校1年にもなったので、本人と話して一旦当学院を卒業しようかということになりました。私たちの「学び」についての方法と考え方である“Alitis Way”には『独往自立』という目標があり、自他共に自分で学んでいけると認めることができれば自立することをすすめます。英語力としては途中段階であったとしても、入試などの当面の目標に対して自分で十分に立ち向かえるのなら自立すべきだと考えます。教えられるのではなく、自ら学び取るものだけが本当に自分の糧となるのですから。そうして、目先の目標を突破してまた次の助けが必要になったら戻ってきて再開すればよい、ということで入会資格は「生涯」ということになっているのです。(もちろん、ただ突き放すのではありません。英語・英文を理解するための基本的な力だけでなく、早い段階から自分自身の学び方の方略(ストラテジー)やテストなどの目的に応じた対策力(タクティクス)なども伸ばすように指導して、その成熟度までを総合的に判断するのです。)
さて、K君は自分で弱点がわかっているもののまだ少し不安があるということなので、卒業試験を課すことにしました。たまたまWeb上で話題になっていた科学誌『Nature』に掲載された論文を1週間で訳して来るという課題としました。内容は、「言葉を話せる以前の赤ちゃんにも道徳心がある」(!)ということを厳密な実験を基に報告している本格的な発達心理学の論文です。(モSocial evaluation by preverbal infantsモ J. Kiley Hamlin, Karen Wynn & Paul Bloom)
発達心理学などまったく知らないK君でしたが、いくつかの術語や実験手続きの専門的な部分を除いてほぼ正確に訳せていました。大学入学後に、自分で直接原典を読むことは必須の能力ですから、高1の段階で順調にその準備ができてきていると考えられます。それで、いよいよ卒業にしようと考えていましたら、世界最高ランクの大学で行われる夏期集中コースの選抜に合格したとのことで、8月に短期留学することが決まったのです。高校生向けの短期コースとはいえ、世界中からその大学をめざすような人たちが集まってくるのですから、密度の濃い体験ができることは間違いないところです。日本の大学入試のためならもう卒業でよかったのですが、今度はその留学のための準備をネイティヴ講師と集中的に行うことになりました。そして、これは当方の推測ですが、帰国後彼の中には、これまで想像することもできなかった「場」とか「学び」そのものに対する希求が芽生えてくることでしょう。海外での学びに対応できるレベルの力をめざしての再スタートを相談してくれるかもしれません。「その先」を見据えて、さらに広い学びの世界へと羽ばたいてくれること、それが私たちの願いです。