Archive for 01 August 2008
01 August
<NATALIS Newsから> 夏休みだからできること
夏休み、いかがお過ごしでしょうか。生徒本人や保護者の皆様とお話ししていますと、ほとんどの方から、忙しくて「たいへん」な毎日という様子ばかりが伝わってきます。いつから子どもたちの夏休みがこんなに慌ただしく追い立てられるようなの時間になってしまったのか、と我が家のことも自嘲しつつ、思わずにはいられません。そこで、逆に、英語や国語を中心に能力開発という視点からお勧めしたいのは、「じっくり」と「たっぷり」という、今やもっとも贅沢かもしれない学び方です。幼児でも小中学生でも、ある領域の能力が一段ぐっと高まる時というのは、練習が一定の量を超えて習熟の域に達した時だということは、常々お伝えしている通りです。脳科学においても神経細胞の樹状突起の発達や軸索の髄鞘化といったより広く太い回路の形成が確実に起こるためには十分な繰り返しが必要であることがわかっています。楽器の練習のような例を思い浮かべるとわかりやすいのですが、なかなかうまくできないことを諦めずに何度も繰り返していると、ある日ふっと楽にできるようになり、その後はほぼいつでもできるようになるものです。それが「力がついた」状態です。
子どもに何かをさせようとするとき、ついついその場での結果を求めてしまいがちです。だから、「どうしてこれができないの!?」となり、それは子どもの側からは無理難題にしか聞こえないので、毎回同じようなケンカ状態になってしまいます、よね。「こんなにやったのだから」とか「これだけ教えたのだから」と思っても、実際には習熟に必要な量には達していないことが多いのです。ものによっては、日をおいて何度もという絶対的な時間の長さが必要なこともあります。ですから、夏休みくらいは、目先の結果を求めずじっくりと構えて本来の学びを取り戻したいものです。黙って見守らなければならない側にとっても、これはけっこうな試練かもしれませんが、本当の我が子の今に寄り添うことができる豊かな時間でもあるはずです。
幼児から大人まで、英語にも国語にも有効な方法を一つだけ挙げるなら、ひたすら書き写し音読することです。(音読だけでもOK!) 例えば、3歳の幼児さんなら、一緒にテキストの Picture Dictionary を開いて、ここ数ヶ月に習ったページの単語をおさらいしましょう。
どれだけ覚えたかとテストしたりしては逆効果であることは言うまでもありません。一つでも言えるものがあれば大喜びしてあげましょう。大好きな人と大きな声を出して同じことを言うことは楽しいと感じてくれるだけで素晴らしいことです。それこそ言葉を身につけるもっとも自然で幸福な形なのですから。例えば、中学生ならば、1学期に習ったページをすべてもう一度自分で書き写して何度も、暗唱できるほど音読する。わからないままになっている部分がなければ、それだけの学習でも2学期には大きく違ってきます。そして、受験生でさえ、実は、「本番を想定した傾向と対策、実戦問題!!」などよりも、じっくり長文を速読→精読した上で、最終的に速く音読できるまで声を出して読む練習を繰り返すという方法でたくさんの文章を読んだ方が、急激に成績を上げることが多いという事実をお伝えしておきましょう。
さて、実りの秋に向けて、夏休み中にどれだけの量をこなすことができるでしょうか。いや、この問いかけは言い直しましょう。どれだけ豊かな実りの秋を思い描いて、この夏休みをじっくり、こつこつと歩んで行けるでしょうか。時間のかかる本物の学びをこそ楽しみたいものです。